個人情報保護と過剰反応

平成17年11月:私の想うこと

中野区の決算特別委員会(9月29日)で、私は区の財政問題を取り上げ、28億7900万円の余剰金(16年度)があるのなら公共施設の整備などに充てるべきだ、9月4日の集中豪雨で妙正寺川の護岸が崩れたが、余剰金を護岸改修に回していたらある程度、被害が緩和されたのではないかと質しました。

行政の立ち遅れはさておき、この水害で床上浸水の被害を受けた約800世帯について、担当課長が住所と氏名を都税事務所とNHKに提供し、税の減免や受信料免除が受けられるよう図ったところ、「個人情報保護条例に違反した」として、訓告処分を受けました。

この間の経緯を述べれば、①被害が出た9月4日から間もなく、中野都税事務所とNHKから減免措置を周知するため被害者情報を提供してほしいと依頼があった。②担当課長は該当者の経済的負担を軽減できると思い、被害者名簿から救済対象となる床上浸水世帯の世帯主と住所だけをリストアップし、各担当者に手渡した。名簿は目的だけに使われ、NHKは後に返還した。③NHKから受信料免除の申請書を送られた一部住民が「個人情報が勝手に提供された」と苦情を寄せた。④田中区長が「安易に提供した」と陳謝し、10月24日付けて「条例に違反して被災者名簿を外部に提供し、区の信用を失墜させた」として担当課長を訓告、上司を口頭注意とした。担当課長は区議会で謝罪を余儀なくされた。
11月1日の読売新聞朝刊によれば、この事実を報じた29日から31日正午までに読者から約80件の反響が寄せられ、ほぼすべてが課長の行動を支持し、処分に疑問を投げかけているそうです。

都主税局も、都税の軽減や猶予は本人が申請しないと適用されないため、これまでも災害時に区市町村に問合わせて被害者リストを作り、通知に活用してきました。同局は「被害者情報を問合わせるのも、応じるのも正当な行為だ。最終的に不利益を被るのは住民ではないか」と要請に応じた課長の処分に不快感を隠せないと読売新聞は報じています。更に同新聞は、都主税局から疑問の声が上がった点について、田中区長が「なぜ他の組織が疑義を狭めるのか。『見解が違う』としか言いようがない」とこれまた不快感を示したと載せています。「区は被災地域に減免手続きなどを紹介したちらしを配っており、都税事務所などへの情報提供は必要なかったとの見解を示した」とも。

確かに区条例でも個人情報を「収集目的の範囲を超えて外部に提供してはならない」と定めていますが、「法令に基づく場合」「生命、健康または財産に対する危険を避けるため緊急かつやむを得ないとき」などは例外としています。
果たして今回の場合、法解釈の「見解が違う」だけで片付けられる問題でしょうか。そもそも条例は住民・弱者の利益を守るためのもので、チラシを配ったことをたてにとり硬直化した対応をしていたら問題です。公僕にとって必要なのは、区民サービスであり思いやりの心なのではないでしょうか。

個人情報保護法が施行されて日も浅く、消防が火災の発生場所の番地を「個人情報」として明かさないとか、自治体が民生委員に独り暮らしの高齢者ら「防災弱者」の情報を提供しないとか、なかには自治体職員が自分たちが従う法令もわかっていない例も全国には多々あるようですが、提供しなければ責任を問われないような今回のケースがまかり通れば、職員のやる気を殺ぐだけです。

主に読売新聞の記事を引用しましたが、私のところにもメールが入り、法律を一義的に解釈して、これが正しいというのは被害者の立場を無視した思い上がりだという厳しい意見が寄せられました。皆様のご意見をお待ちしています。

〈付記〉 個人情報保護について、読売新聞11月5日朝刊では1面トップで国民生活審議会が再開し、「運用見直し協議」「過剰反応に対応」と報じています。また社会面でも大きく扱い、「災害時に備えた自治会の住民名簿作りなど非営利団体の個人情報の有効利用に支障が出ている上、国民の期待が大きい肝心の悪質業者排除にも使えない実態が浮かび上がった」と関連記事を載せています。

今回の中野区のケースは、やはり災害者の立場を忘れた「過剰反応」ではないでしょうか。